研究概要 |
62年度は典型的高濃度近藤系物質の1つであるCe Cu_6の単結晶を使ってa, b, 及びc軸方向の熱膨脹係数α_a, α_b, α_cを測定した. 又同時に参考物質としてf電子をもたない単結晶La Cu_6のα_a, α_b, α_cも測定した. Ceのf電子による熱膨脹への寄与△α_i(i=a, b, c)をLa Cu_6のα_iを使って△α_i=α_i(Ce Cu_6)-α_i(La Cu_6)として見積った. その結果△α_aは10【less than or similar】T【less than or similar】300Kの範囲で殆んど0であった. 一方△α_bは30K付近に幅広いpeakをもついわゆるショットキー型の振舞いをすることが明らかとなった. 更に△α_cは30K付近に小さなrninimumをもちT【less than or similar】20Kで温度下降と共に急激な上昇がみられた. このように△α_iの温度依存においてCe Cu_6の結晶構造がorthorhombicであることを反映して大きな異方性が観測された. △α_bの振舞いは比熱の30K付近のpeakとよく対応しておりこの異常がCeイオンの結晶場によるものであることを示している. そこで我々は最近大川らによって提出された結晶場による熱膨脹異常の計算結果をもとにして我々の実験dataの解析を行った. 理論的計算による熱膨脹係数値α_<th>を△α_bにほぼ等しい即ちα_<th>〜△α_bと仮定することにより, △α_b-T curveはうまく再現できることが判明した. 又△α_c-T curveの低温における異常は希薄近藤系の比熱がT_k付近でmaximumをもつことを考慮して近藤効果によるものと考えられる. 又更に熱膨脹係数の磁場効果を調べたところ5-5 Teslaまでの範囲では上記のα_iにおける異方性はなくならないことがわかった.
|