研究概要 |
昭和59-60年度(科学研究費補助金交付前)においてAg-Mg合金の逆位相長周期構造には, 組成(e/a)依存性のみならず, 顕著な温度依存性があり, いわゆる"悪魔の階段"的な不整合・整合相転移の様相を示すことを見出した. 61-62年度においては, 不整合・整合相転移のダイナミックスを整合欠陥(Discommensuration)の動きに着目して, 透過電子顕微鏡中で高温ステージを用いてその場観察をすることに成功した. これは物質名を問はず, 不整合・整合相転移の動きを直接その場観察した最初の例である. これら合金の長周期構造の組成依存性, 温度依存性, および整合化過程の動脈振る舞いに関する観察結果, さらに, これらの結果と典型的な電荷密度波系である2H-TaSe_2の場合の結果とを比較対照することにより, Ag-Mg合金の長周期構造の起源は, 変調モードは通常の電荷密度波の場合の変位型とは異なるものの, 同じく電荷密度波によるものであるとの結論を得た. ところで, 合金の逆位相長周期構造が, 無秩序相から形成される際にはどのような経過をたどるのであろうか. 通常の一次相転移の場合と同様に核生成・成長という過程をたどるのであろうか. これは大変興味深い問題である. そこで, 62年度後半においては, 無秩序相から長周期構造が形成される過程を調べた. 現在までに, 逆位相長周期構造が形成される際に, 途中経由すると思われる, 中間秩序状態にある新しい構造を見出している. これは逆位相長周期構造の成因とも関連し, 非常に重要な知見と思われるが, 確証を得るためには, 試料の熱処理条件を変える等をすることにより, さらに多くの観察データを蓄積する必要がある. これらは今後の研究課題である.
|