合金の逆位相長周期構造の形成過程・成因の研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62540224
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 藤野 豊 東北大学, 工学部, 助手 (60005402)
• 研究分担者: 平林 真 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00005836)
• キーワード: 銀-マグネシウム合金の逆位相長周期構造 / 秩序・無秩序相転移 / 不整合・整合相転移 / 整合化過程 / フェルミ面のネスティング / 電荷密度波 / ポテンシャル / エネルギー波 / 合金の逆位相長周期構造の安定性

研究概要

昭和63年度においては、Ag-Mg合金の逆位相長周期構造がどの様な経過を辿り形成されるかを透過型電子顕微鏡観察により調べた。観察の結果、無秩序相から逆位相長周期構造 (M=2) が形成される過程は通常は一次の相転移の場合における様な核生成・成長の機構とは異なり、まず初めに逆位相長周期構造とほぼ同じ平均周期を持つ規則化した部分と無秩序の部分が層状をなしている準安定な構造が形成され、その後、次第に秩序化が進行して逆位相長周期構造が出現するという機構によることがわかった。さらに、ここで始めて見出された、規則化した部分と無秩序の部分が層状をなしている新しい構造は、Fermi面の (110) 方向の平らな部分におけるネスティングに起因して生じるものとする解釈を提案した (Phys.Rev.Lett.に投稿中) 。
本研究で見出した新しい秩序形成機構はAg-Mg合金に限らず、他の合金系にも存在するものと考えられる。今後はAg-Mg合金の組成および熱処理条件を変えて、また他の合金系を用いて、この新しいタイプの秩序形成過程に関して、k空間と実空間の両面からの詳細な観察データを蓄積する計画である。そして得られる結果と合金の無秩序相に見られる短範囲規則に関するCook(1975年)、Krivoglatz(1983年)、等の理論および合金の長周期構造に関するSato-Toth (1961年) 、Tachiki-Teramoto (1966年) のBrillouinゾーンメカニズム理論あるいはde Fontaine-Kulik (1985年) によるANNNI (Axial Next Nearest Neighbour Ising) モデルによる理論等との比較対照を行い、合金の長周期構造の形成過程・成因を探るつもりである。

研究成果

• [文献書誌] Y,FUJINO;H,SATO;M.HIRABAYASHI;E.AOYAGI;Y,KOYAMA: Physical Review Letters. 58. 1012-1015 (1987)
• [文献書誌] 藤野豊、平林真、里洋: 物性研究. 49. 36-40 (1987)
• [文献書誌] Y,FUJINO;H,SATO;M.HIRABAYASHI: Proc.Int.Conf.Phase Transformations '87,Cambridge (1987). 585-587 (1988)
• [文献書誌] H,SATO;Y.FUJINO;M,HIRABAYASHI;Y.KOYAMA: Proc.Int.Symp.Dynamics of Ordering Process in Condensed Matter,Kyoto (1987). 519-524 (1988)
• [文献書誌] 藤野豊: 物性研究. 50. 306-314 (1988)
• [文献書誌] Y.FUJINO: Physical Review Letters.