研究概要 |
本研究は, 分子性結晶(CS_2, N_2O, CO_2)の格子振動による遠赤外吸収スペクトルの圧力および温度の依存性を測定研究し, 格子振動の非調和相互作用を解明しようとするもので, 昭和62年度に以下に述べる成果が得られた. 1.結晶試料を育成し, 遠赤外吸収スペクトルの圧力および温度の依存性を測定するために, 温度可変の液体ヘリウム用光学型クライオスタットを特別仕様で製作し, テストした結果, 同クライオスタットは本研究に必要な性能を有することが分かった. 2.高圧力下で, 遠赤外吸収を測定するためのフーリェ変換干渉計については, 一応の整備を終了した. 3.CO_2結晶の赤外活性並進的格子振動の温度依存性を測定・解析した結果, 格子振動モード間相互作用に有用な知見が得られた. 結果は第42回日本物理学会年会(予稿集2, p208)(1987)で口頭発表された. 4.CS_2結晶について, 木原のコア・ポテンシャル・モデルを用いて計算した格子振動数は, 測定された振動数に±4%の範囲内で一致し, 分子性結晶に対する同ポテンシャルの有用性が確認され(第42回物理学会年会予稿集2, p207, 1987), 格子振動の圧力および温度依存性の解析に必要である知見が得られた. 当初, 0〜20kbarの高圧発生を計画したが, 分子性結晶における格子振動の圧力変化は, 低圧領域でも, 比較的大きいことが期待されるため, 静水圧が容易に得られる高ガス圧型光学セルを用いて, 0〜5kbarの圧力範囲で実験を行なうことにした. 昭和63年度は, 高圧光学セルなどの完成により, 高圧下における分子性結晶の遠赤外吸収スペクトルの測定を本格的に行なう予定である.
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