遷移金属ペンタテルライドは、HfTe_5、ZrTe_5が人工的な合成に成功しており、それぞれ70K、150K近傍に大きな抵抗異常を示すことが知られている。しかしこの抵抗異常の原因が何によるものであるのか不明であるため、この原因の解明を行った。まずフェルミ面の形状解明をシュブニコフ・ド・ハ-ス振動の解析により行い、その結果をもとに、光学的手段によるバンド構造の解明を目指した。シュブニコフ・ド・ハ-ス振動の解析よりこれらの物質は抵抗異常の温度以下で小さな異方的質量をもった電子帯の存在が解明された。また強磁場中ホ-ル効果の温度特性より、抵抗異常の高温側では正孔が存在し、伝導に寄与していることが確認された。さらに重い電子帯の存在も予知されDた。これらの成果をもとに、微少試料(0.1×0.05mm^2程度)の光学測定を液体ヘリウム温度から室温まで行うことのできる低温クライオスタットの製作を行った。顕微鏡下における分光測定を実行できるように、この低温クライオスタットは、試料表面からクライオスタットの窓の室温側表面までの距離を5mm以内とすることに成功した。液体ヘリウムを流量調整しながら流し、温度コントロ-ラによる低温温度制御を行った結果、15Kより室温まで約0.1Kの制御が可能となった。この成果により作業空間D 距離5mmの顕微鏡下において低温分光測定が可能となった。試料作製については、ZrTe_5では0.1mm幅の単結晶が得られたが、HfTe5については長さ0.1mm程度であるが巾20〜50μmと小さく、より大きな単結晶の作製に努力している。これらの成果をもとに、現在赤外線顕微分光器、顕微ラマン測定装置を用いて光学測定を行い、プラズマ吸収端の温度変化の測定や、光パイプ光学による磁気光吸収測定を計画している。
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