昨年度(米国ブルックヘブン研究所との共同で)行った中性子散乱実験の結果Y(Mn-Al)_2系は従来の巨視的実験からの予測通り、遍歴電子磁性【double arrow】局在電子磁性の転移を示す系であることが確認され、スピンの揺らぎの局所密度の大きさ及びそれらの間の空間的相関の温度依存性について定量的情報が得られた。またこの実験の際、Y(Mn_<0.9>Al_<0.1>)_2からの散乱中性子のエネルギー幅はスピングラス転移温度付近で異常に大きな温度変化を示すことを発見した。この系のスピングラス転移に関する研究は当初予定していなかったが、極めて興味深い事柄であるため、本年度この点に関して更に詳しく中性子散乱実験を行なった。散乱中性子のエネルギースペクトクルはローレンツ型であり、その幅の温度依存性Γ(T)は10K-680Kの範囲(実験温度の全範囲)にわたってΓ(T)=Γ_0 exp(-Ea/kT)によって表わせる。パラメータΓ_0の値はほぼ同じスピングラス転移温度を示すNi_<0.784>Mn_<0.216>に比べ100倍以上大きい。これはYMn_2自身の特異な磁気構造(長周期螺旋反強磁性)の起源でもある異符号の大きな交換相互作用の競合の存在を直接表すものと考えられる。 本補助金で購入したアーク溶解炉による純良試料の作成はその後順調に進み、アルミニウム濃度0-5%の試料についてSQUID磁化率計による低磁場磁化測定によって、長距離秩序相からスピングラス相への転移の様子を確認した。これらの試料について、中性子散乱・核磁気共鳴の微視的測定を行ないつつある。 常磁性相に於ける核磁気共鳴測定は高温部を除いて既に他のグループによって結果が出された。このデータ(未発表)と今回の中性子散乱実験の結果をまとめた解析は現在進行中である。
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