昭和62・63年度米国ブルックヘブン研究所との共同で行った中性子散乱実験の結果Y(Mn-Al)_2系は従来の巨視的実験から予測されていた通り、遍歴電子磁性【double arrow】局在電子磁性の転移を示す系であることが直接確認され、スピンの揺らぎの局所密度の大きさ及びそれらの間の空間的相関の温度依存性についての定量的情報が得られた。この系の常磁性相における核磁気共鳴実験は高温部を除き既に他のグループによって行われている事が解った。この(未発表)データを利用した中性子散乱実験データとの組み合わせによる総合的解析は現在進行中である。また、Y(Mn_θ._9Al_<θ.1>)_2の中性子散乱実験中、散乱中性子のエネルギー幅がピングラス転移温度付近で異常に大きな温度変化を示すことを発見した。この系のスピングラス転移に関する研究は当初予定していなかったが、極めて興味深い事柄であるため、本年度この点に関して更に詳しく実験を行った。その結果、散乱中性子のエネルギースペクトルはローレンツ型であり、その幅の温度依存性Γ(T)は10K-680Kの範囲(実験温度の全範囲)にわたってΓ(T)=Γ_θ exp(-E_a/KT)によって表わすことができるが、パラメータΓ_θの値はほぼ同じスピングラス転移温度を示す。Ni_<θ.784>Mn_<θ.216>に比べ100倍以上大きいことが解った。この結果は、YMn_2自身の特異な磁気構造(長周期螺旋反強磁性)の起源でもある異符号の大きな交換相互作用の競合の存在を直接表わすものと考えられる。 アーク溶解炉による純良試料の作成は順調に進み、アルミニウム濃度0-5%の多数の試料についてSQUID磁化率計による低磁場磁化測定によって、長距離秩序相からスピングラス相への転移の様子を確認した。これらの内の代表的の試料について、中性子散乱・核磁気共鳴測定は現在進行中である。
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