研究概要 |
遍歴電子反強磁性体YMn_2のYをScで置換すると反強磁性が消失し, 巨大なスピンの揺ぎを示すパウリ常磁性体になることを熱膨張の解析, 中性子散乱実験によって示した. 今年度は, Y_<1-X>ScxMn_2系の低温比熱, 電気抵抗の測定を行ないこの系が重いフェルミオンとしての性質を示すことを見出した. 以下に主な測定結果を記す. 1.Y_<0.97> Sc_<0.03> Mu_2の低温比熱の測定. 既存の断熱型比熱計で1.6K〜6Kの間で比熱を測定した. その結果電子比熱係数が α=140mJ/k^2molと3d系では最大の値をもつことを見出した. これは巨大なスピンの揺ぎにより電子系が重いフェルミオンとしての性質を示すものと解釈している. 2.Y_<0.27> Sc_<0.03> Mn_2の電気抵抗の測定 重いフェルミオン系の特徴の一つとして低温において電気抵抗がT^2に比例しその係数Aがきわめて大きいことが知られている. 実際に電気抵抗を測定した結果, たしかにこの物質においても A=0.25μΩcm/K^2と3d系では最大級の値を示し, A/γ^2の値は4f系, 5f系の重いフェルミオン物質の値とほぼ一致することを見出した. 3.Y_<0.97> Sc_<0.03> Mn_2の中性子散乱の解析 フランスのグルノーブルで行なった偏極中性子散乱の結果をスピンの熱揺ぎ成分と量子揺ぎ成分に分けることを試みた. その結果OKでも巨大な量子揺ぎが存在し, 温度と共に330Kで約1.5μ_<13>の振巾の熱揺ぎが誘起されることを見出した.
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