研究概要 |
遍歴電子反強磁性体YMn_2のYをSc置換すると反強磁性が消失し、巨大なスピンの揺らぎを示すパウリ常磁性体になることを熱膨張の解析、中性子散乱の実験によって示した。本研究ではさらに低温比熱、電気抵抗の測定を行いこの系が3d金属でありながら重いフェルミオンとしての性質を示すことを明らかにした。さらにMnをAlで置換したY(Sc)(Mn_<1-x>Al_x)_2系について、磁化率、低温比熱、熱膨張を測定し、この系の特異な性質が磁気相互作用の競合(フラストレ-ション)によることを示した。以下に各年度の主な成果を記す。 昭和62年度 (1)Y_<0.95>Sc_<0.05>Mn_2の低温比熱を測定した結果、電子比熱係数がγ=145mJ/mol・K^2と3d系では最大の値を持つことを見いだした。 (2)Y_<0.95>Sc_<0.05>Mn_2の電気抵抗を測定した結果、低温で電気抵抗が温度の2乗に比例しその係数はA=0.25μΩcm/K^2と大きく、4f,5f系の重いフェルミオン物質に匹敵することを見いだした。 昭和63年度 (1)比熱測定装置を自動化し、Y_<1-x>SC_xMn_2系の比熱を測定し電子比熱係数の濃度依存性を求めた。 (2)電気抵抗測定装置を自動化し、Y_<0.95>Sc_<0.05>(Mn_<1-x>Al_x)_2系の電気抵抗の温度依存性を測定し、Al濃度の増加とともに重いフェルミオン系から局在モ-メント系へ移行する事を明らかにした。 平成元年度 (1)Y_<0.95>Sc_<0.05>(Mn_<1-x>Al_x)_2系の磁化率、低温比熱を測定しこの系特異な性質を磁気相互作用の競合作用によって巨大スピンの揺らぎが生じるとして説明した。
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