研究概要 |
1.ヘキサジイン型ジアセチレンモノマーの2個の置換基をR, R^1で表わすと, R=R^1=カルバゾールとした対称モノマー(DCH)の結晶はボーマンの経験則を満たさないにもかかわらず固相重合反応を起こす. しかも, DCH結晶には(1)モノマーで見られる単結晶転移型の一次相転移(2)モノマー結晶中に生成されるポリマー鎖が(1)の相転移時に示す色相転移(青【double arrow】赤), (3)モノマー結晶からポリマー結晶への相転移, がある. (1), (2)は可逆的であるが(3)はモノマーの約30%がポリマーへ転化したときに起きる不可逆な相転移である. 何れの相転移も, モノマーの格子定数とポリマーの格子定数との不一致によって生ずるポリマーの歪, および, ポリマーに蓄積される歪エネルギーを考慮して説明できる見通しとなった. 2.本年度新たに合成したモノマーはR=カルバゾールをそのままにしてR^1=4-メチルテレフタロイル(CTPHD), または, R^1=2.4-ジニトロフェニルエーテル(CNPHD)とした2種類の非対称ジアセチレンである. 単結晶を用いたX線構造解析の結果, 何れも単斜晶系に属することが判明したが, どちらもボーマンの経験則からは大きくはずれているので固相重合反応は起こりにくい例であると予想された. 3.DCHの場合には反応が完全に終了するほどのγ線を上述のCTPHD, CNPHDに常温で照射しても殆んど重合反応は進行しないことが明らかになった. この結果はボーマン則を支持するものであるが, CNPHDは高温で単結晶転移型の相転移を起こす可能性が残されており, また, 何れの結晶も反応の照射温度依存性を確かめてみることが必要である. さらに, 圧力をかけることによってボーマン則を満たすようになる可能性もあるので, これらの課題の遂行は今後の研究の展開にとっても重要な知見の一つになるものと考えられる.
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