研究概要 |
本研究は, 電子顕微鏡にカメラとマイクロコンピュータを接続し, 結晶性試料の構造観察を連続的・自動的に行える簡易システムを開発し, これによって, 化学変化に伴う結晶の成長・転位機構を原子オーダで解明することを目的にしている. 本年度において, (1) マイクロコンピュータ上でマルチスライス法により電子顕微鏡像のシミュレーションを行うプログラムを開発した. この方法で最も問題となるフーリエ変換については, 1024点の複素数を1.45秒で変換できる高速フーリエ変換(FFT)のプログラムを作った. これによって, 従来, 大型計算機でしかできなかった高分解能電子顕微鏡・像のシミュレーションが, マイクロコンピュータ上で短時間で行える様になった. たとえば, 厚さ8nmの金の(100)膜を20スライスに分け, 1024の電子波を励起させた回折波の計算は, PC9801E(8MHz)を使った場合は90秒ででき, 種々の条件の下の格子像を各4秒で表示できる. 成果は〔雑誌論文3〕で発表する. (2) 化学変化に伴う結晶の成長を連続的に観察する予備実験として, 金属とカルコゲンとの反応を写真フィルム上への撮影という普通の方法で行った. 銅がテルルと反応し, 六方晶のTeが, 六方晶超格子のCu_<0.5>Te, 斜方晶のCu_xTe正方晶のCu_<4-x>Te_2, 六方晶のCu_<2-x>Te, に転移する機構, および, 生成したテルル化物の表面構造, 粒界構造を上記計算機プログラムを用いて原子格子的に解明した. また, 銅とセレンの反応生成物に対しても, 六方晶のSeが六方晶のCu_<1-x>Se, 六方晶のCuSe, 正方晶のCu_3Se_2, 立方晶のCu_<1.8>Seへと次々に転移する機構を明らかにした.
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