ABX_3型Jahn-Teller結晶であるCsCuCl_3RbCuCl_3等は、Jahn-Teller効果によって構造相転移をおこす。この構造相転移を微視的見地に立って、核磁気共鳴(NMR)、核四重極共鳴(NQR)によって研究を行った。結晶変態によって引きおこされる物性的変化が、共鳴線の周波数、線幅、緩和時間等の変化としてあらわれるため、これらの正確な測定が必要である。CsCuCl_3、RbCuCl_3中のCu原子は、常温で常磁性状態にあるため、各原子の共鳴信号の線幅が、非磁性物質にくらべて数10倍に広がっている。その上高温側での測定が要求されるため、S/N比の改善が必要であった。そこで、昨年度に引き続き装置の製作・改良を、次の2点について行った。 1)広幅を性格に測定できる自動測定可能なマージナル発振器の開発。 2)パルス法NMR(NQR)装置の製作。 開発段階において、1)のマージナル発振器を高温超伝導体YBa_2Cu_3O_<7-δ>H_<0.2>の^1H核のNMRの測定に応用した。超伝導状態では、磁場変調で信号を検出することは不可能であったが、周波数変調を用いながら、方法を工夫することによって信号検出を可能にした。そればかりではなく、高価な機器を使用したμSRによって通常測定する磁場侵入度入を、NMRの線幅の温度変化より決定することが出来た。また、2)のパルス法によってもYBa_2Cu_3O_<7-δ>H_<0.2>の^1H核のNMRにおいて、スピン-格子緩和時間T_1の温度変化を測定して、常伝導および超伝導における多くの知見を得ることが出来た。また、広幅のNQR信号として、Chloral Iso-Butylhemiacetalにも用いて、この結晶中に生じた格子欠陥についての多くの知見を得た。 準一次元Jahn-Teller結晶CsCuCl_3、RbCuCl_3等については、今後、NMR、NQRの測定に使用できる大きな単結晶も作製して精力的に研究し、構造相転移の原因について明らかにしていきたい。
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