研究概要 |
点接触スペクトルスコピーのための装置を完成した。装置はパルスモーターからなる粗動部と、積層形ピエゾ素子とバイモルフ形ピエゾ素子を組み合わせた微動部からなる。パルスモーターは、1パルスあたり、0.36°回転する。この回転をネジによって、1μmの上下(z)方向の運動に変換した。さらに、試料ホルダー底部に取り付けた、積層型、ピエゾ素子によって、1Vあたり0.005μmのz方向の微動を行うことができる。微動の範囲は±1μmである。微小接点はニードルとアンビル(いずれも試料)の間に形成される。当初の計画では、ニードルとアンビルの距離を静電容量の測定によって行い、距離の制御を行う予定であった。しかしこれは装置が大げさになる割合に実用的ではないので、トンネル電流による方法に変更した。ニードルはバイモルフ型のピエゾ素子に、よって0.3μm/Vの精度で横方向にも移動させられる。これによってアンビル上の適当な位置に微小接点を作ることが可能となった。 本装置を利用して、CeCu_6とLaCu_6の点接解スペクトロスコピーの測定を行った。CeCu_6では4f電子と、伝導電子の相互作用による非弾性散乱の効果が観測されることが期待された。LaCu_6は、4f電子を持たないので参照化合物として測定した。これらの試料は可塑性がほとんどなく、鋭い先端をもつニードルを作ることができなかったので、試料を 開し、開面どうしを接触させて、微小接点を作った。このために理想的な微小接点を作ることが難しく、拡散領域(a≦min{li,(leli)^<1/2>}、aは接点の代表的大きさ、le,liは、それぞれ弾性散乱と、非弾性散乱の平均自由行程)にある接点と、Maxwell領域(a<le,li)にある接点が並列にできている可能性がある。このため多数回の測定を統計的に処理してCeCu_6において、結晶場によって分裂した、イオンによる非弾性散乱と考えられるスペクトルを観測することに成功した。
|