研究概要 |
今年度は, 標記研究の初年度として, 回転機構を有するトンネリング測定用liq.Heクライオスタットを設計し発注した. なお, トンネリングバリアとして真空を用いることも考慮し, Scan-ning Tunneling Microscopy(STM)として設計した. 最初のテスト物質として, 層状構造物質1T-TaS_2を計画通り試作する一方, 今年度初めより急に注目されるようになった, 層状ペロブスカイト構造をもつ酸化物高温超伝導体YBa_2Cu_3O_<7-Y>をも採り上げることとし, 手始めとして, セラミックスとしての作成条件の系統的な研究を行なった. その結果を, 窯業協会電子材料研究会(1987.10.21;早大理工), SINTERING '87(1987.11.6;サンシャイン), MRS '87 Fall Meeting(1987.12.1;ボストン), 日本物理学会秋の分科会(1987.9.28;東北大)で発表した. さらに, この物質を用いて, S-I-N, S-I-S(S:超伝導体, I:トンネリングバリア, N:常伝導体)構造のトンネリング測定を行なった. Tc(〜93K)近くでの, 熱的ノイズに埋もれた信号をとり出すために, 電流の電圧に対する3階微分信号をとり出す回路を設計し, それによって, 4.2KからTc直下までにわたり, 超伝導オーダーパラメータの温度依存性を観測することに成功した. 複数個のオーダーパラメータを示す信号が得られたが, これらが超伝導ギャップを示すものであるかどうかはまだ明らかでない. また, これら複数の信号が, この物質の異方性を反映したものかどうかも未解決である. これらを明らかにするために, LPE法による単結晶エピタキシャル成長の準備を開始した. なお, これらのトンネリング測定の結果は, MRS '87 Fall Meeting(1987.12.3), および日本物理学会年会(1988.4.1)で発表した.
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