本年度は、試料に層状構造物質1T-TaS_2を用いて、角度分解型トンネリングの実験を行なった。その結果、1T-TaS_2に特有な電荷密度液(CDW)に起因するエネルギ-ギャップ構造を0〜120°の範囲で、はじめて観測することができた。また、このCDWギャップ構造がフェルミ面の異方性と同じ60°周期で規則的に変化していることがわかり、フェルミ面の異方性の測定を意図した。角度分解型トンネリングスペクトロスコピ-の有用性を確認することができた。この結果を、日本物理学会秋の分科会(1989.10.6;鹿児島大6a-C-13)で発表した。また、試料に高濃度ド-プn型シリコン単結晶を用いて(111)面内の角度分解型トンネリングの実験を行ない、Δ軸上にあるフェルミ面の回転角による重なりの様子を観測することができた。この角度依存性は、シリコンのフェルミ面の異方性を考慮した理論計算結果と定性的によく一致し、計算結果と実験結果とをフィッティングすることにより、シリコンのフェルミ面の大きさおよび異方性を求めることができることがわかった。この結果は、日本物理学会第45回年会(1990.3.30;大阪大30a-V-3)で発表する予定である。 また、昨年度から推めていた、角度分解型トンネリングスペクトロスコピ-により期待さるフェルミ面の異方性の、トンネル電流の角度依存性に関するシミュレ-ションを、より大きなモデルで行なった。この結果を、第4回走査型トンネリング顕微鏡/電子分光国際会議(1989.7.12;大洗P2-27)で発表した。
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