研究概要 |
1.第一原理から求めたPの非局所擬ポテンシャル, およびそれのd成分のみを変化させた仮想的なAsのポテンシャルを用いて, 高圧下での全エネルギーおよび電子状態の計算を行い, A7構造から単純立方構造への相転移圧がPとAsとで大きく異なる原因を明らかにした. Pの場合, 内核状態としてd成分は含まれていないため, 価電子を記述する擬ポテンシャルのd成分の引力部分がAsよりかなり強く, フェルミ面近傍の状態にd成分が多く混じってくる. そのため(111)方向でのフェルミ面のネスティングを取除くためのバンド構造エネルギーの利得より静電エネルギーの利得の方がおおきくなるため, すなわち, A7構造を安定化するパイエルス転移の機構を弱めるため単純立方構造がAsより低圧で出現する. さらに超高圧ではPもAsも体心立方構造になることを示した. 2.SbはPやAsとは異なり単純立方構造は現われずに体心立方構造になる. これはイオンコアの大きさによる平均原子間距離の違いのためと擬ポテンシャルのP成分の引力部分が弱いため, 単純立方構造をとったときの結合と反結合状態とのギャップによるエネルギー利得がPとAs程大きくなく, 静電エネルギーの利得が最も大きい体心立方構造が出現するものと考えられる. なお, 全エネルギーの計算結果から得られたAsとSbに対する高圧下での圧縮率の変化は実験をよく再現する. 3.凍結フォノン方の精度をチェックするため, 実験データのある黒燐構造における(001)方向のゾーンエッジのフォノンエネルギーを計算し, そのソフトニングの様子から, 高圧下では絶対零度でも黒燐構造からA7構造への転移が可能であることを示した.
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