研究概要 |
当研究では, 自己無撞着摂動理論を用いて, 重い電子系の一粒子状態密度と動的帯磁率を算出し, 統一的な観点からその物理的性質を明らかにした. 非線型積分方程式を数値的に解く際に, 東北大学の大型計算機を使用し, 結果をグラフ化して出力する際にXYプロッターを活用した. また2回の出張により, 他大学の研究者と最新の情報交換を行うことができた. 以下に具体的な成果を報告する. 1.近藤効果の協力的増大の解明. 近藤温度より高い温度では, f電子が非局在化して他のサイトの近藤効果に寄与するため, 近藤効果が増大することが示された. この協力効果は, 状態密度と静的帯磁率に現れる. 2.低温域での特性エネルギーの同定. フェルミ準位近傍での準粒子のくりこみ定数を求め, これに対する高密度効果とf殻の縮重度の効果を調べた. この結果, 低温でのくりこみ効果に対するサイト間相互作用は, 縮重度の大小に拘らず極めて弱いことがわかった. ただし, 静的帯磁率には, 縮重度が小さい場合にサイト間相互作用の効果が顕著に現れる. (1と2の研究は, 東北大理学部物理の理論グループと協同してなされた. ) 3.変分原理に基づいた動的帯磁率の導出. 自己無撞着摂動理論を, 変分原理に基づいて再定式化することにより, 動的帯磁率に対する積分方程式を導出した. この方程式は, 極限的な場合にRKKY相互作用を再現し, 近藤効果によるその変質を考慮している. 63年度に数値解を求める計画である. 4.中性子散乱結果の理論的解析. 重い電子系CeCu_6の磁気的中性子散乱の結果を分析し, 「殆んど局在した準粒子」の概念を用いて特徴的な波数依存性を説明した. これらの成果のいくつかは, 既に出版論文として, また国際会議の講演として公表さている.
|