研究概要 |
本年度の研究は, N個のスピンから成る量子系の物理量を, コンピュータで計算し, それらをN→〓に外挿して無限系の物理量を求める方法を用いる. この方法はコンピュータのメモリ容量の制限のため, N【greater than or similar】0の計算は困難になる. 我々はこの困難を克服する2つの方法を開発した. 第1は体系を2つの部分系A, B及び両者の境界Cに分ける. 全系の分配関数の計算はTrotterの公式を用いる. まずC上のスピンをとめておいて, A及びB内のスピンのTraceをとる. この計算は独立にできるので, 必要なメモリ量を非常に縮少することができる. 最後にC上のスピンのTraceをとって完了する. 第2の方法は, やはり体系を2つの部分系A, Bに分けるが, 今度はA, Bを結ぶ相互作用をCとする. 全系の基底状態のエネルギーを計算するのに, 部分系の基底状態をまず計算し, Cに対して摂動計算をする. 実際この方法によりN=36まで計算することができた. さらに有限量子系で, スピン角運動量の結合則を用いて, 各固有状態で, 全スピンの大きさと, その固有関数の時間反転に対するパリティの関係を見出し, それを用いて基底状態のパリティを決めることができた. 有限古典スピン系も研究した. 第1は〓Jモデルで, 距離〓だけ離れた2個のスピンの相関関数g(〓)を計算する方法を開発し, g(〓)の〓による減衰から, 3次元〓Jモデルではスピングラス相が存在するが, 2次元の場合には存在しないことを示した. 第2は三角格子で, 最隣接及び第2最隣接相互作用が, 反強磁性及び強磁性の場合に, 上記の方法で相関関数を計算し, その減衰を調べるスケーリング関数を導入し, その振舞から, この系は低温ではフェリ相, 高温ではパラ相で, 中間領域はKost〓ylitz-Thouless型の相であることを確認し, その2つの相転移における臨界指数〓の値を求めることができた.
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