1.スピングラスの平均場理論 スピングラスにおいては準安定状態が多数存在すること(より一般的には位相空間でみた自由エネルギーが多谷構造をもつこと)、および、それに起因する種々の現象に関する詳細な知見を得るため、2、3年の平均場模型について以下の研究を進めた。(1)FexM_<(1-x)>TiO_3系のスピングラスー反強磁性転移について、その相互作用の特長を捕えるようにSK模型を拡張し、レプリカ法で調べた結果、濃度xによって異なる磁化率の温度依存性や有限外部磁場下でのリエントラント転移の振舞いなど、多くの実験事実を説明できた。(2)SK模型の状態方程式においてOnsagerの反跳場項を無視した式で記述される系(ナイーブ平均場模型)について、その準安定状態の温度変化の様子を詳しくシミュレートした。現在データの解析を進めている。 2.電荷密度波(CDW)のダイナミックス CDWをランダムな多自由度非線形動力学系であるとする観点から、その多様な電気伝導現象を統一的に理解するため、福山ーLeeーRice(FLR)模型に基づいた解析を行なった。(1)1、2、3次元FLR模型に対する計算機シミュレーションを行ない、非線形電気伝導度の次元依存性およびピン止めポテンシャルの強度への依存性を明らかにした。(2)熱浴効果を含めたFLR模型におけるCDW電流の確率的な振舞い、特に狭帯域雑音ピークの幅や1/f型の広帯域雑音、およびモードロッキングが生じている場合のそれらの振舞いを計算機シミュレーションで調べた。その結果から、このような現象は、CDWの運動がパターンにも定常状態に近いものが多数存在し、CDWが熱活性化過程によってその間を確率的に推移することに起因していると理解された。
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