研究課題/領域番号 |
62540266
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物性一般
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大林 康二 広島大学, 総合科学部, 教授 (20013518)
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研究分担者 |
宇田川 真行 広島大学, 総合科学部, 助教授 (70144889)
渡部 三雄 広島大学, 総合科学部, 教授 (20004286)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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キーワード | 超流動 / 液体ヘリウム / 素励起 / ロトン / ラマン散乱 |
研究概要 |
最も典型的なボーズ凝縮系である超流動ヘルウムを、分子間力を基礎にしてミクロな立場から解明しようとする理論的枠組みにおいては、明確な基礎づけがなされているファインマン・コーエンの導いた理論構造因子と、実験で観測される構造因子との隔たりを解決することが最も重要な課題である。これを結びつける理論としてはルボルツ・ザバドフスキーの素励起間相互作用モデルが定説とされていた。本来この研究課題は、ボーズ凝縮系の素励起とフェルミ粒子との相互作用を研究する目的で始められたが、昨年度の研究において、この定説を覆す可能性のある2ロトン・ラマン・スペクトル形状を観測するという重要な発見を得たので、純粋ボーズ凝縮系における素励起と素励起間相互作用の研究を重点的に行った。そのため実験装置として、レーザー光散乱用ヘリウム3クライオスタットを開発整備し、入力レーザー光強度400mWで0.65Kにおける1週間の連続運転を可能にし、2次元のマルチ・チャンネル・フォトン検出器を導入し、精度と感度の飛躍的向上を行った。これにより、温度0.65K、分解能0.45Kで2ロトン・スペクトルを高精度で測定することに成功し、圧力を飽和蒸気圧、5、10、15、20kg/cm^2と変化させてデータをとった結果、2ロトン・ピークの位置は圧力の増加に伴って、中性子散乱で観測されるロトン・エネルギーに比べて、飽和蒸気圧では負にシフトしているが、5kg/cm^2以上では正にシフトが変わり、圧力の増加に伴って正のシフトは増加することが分かった。また、飽和蒸気圧のスペクトル形状は従来の定説で説明されるが、5kg/cm^2以上の高い圧力下での正にシフトしたスペクトルの形状は説明できないことを明確に示すことができた。これによって、ボーズ凝縮した超流動ヘリウムにおける素励起間相互作用の研究の新しい展開の必要性を示すことができた。
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