研究概要 |
規則的にフラストレーションを持つ量子スピン系及び古典スピン系の基底状態と相転移に関する研究はランダムにフラストレートしたスピングラス系の研究と共に重要な基礎論である. 一方, 本研究課題申請後, 高温超伝導物質群が発見されつつあり, その発生メカニズムをめぐっていくつかの新機構が考えられるなかで, アンダーソンの提唱している混合原子価結合によるモデルは, 彼が10数年前に発表した三角格子反強磁性体系の基底状態の問題の中で追究されて来た. このことを考え合わせると本研究の重要性が更に浮上して来た思いがする. さて具体的研究計画の1.超低温に亘る多目的(比熱帯磁率・磁気共鳴用)クライオスタットの完成については, 62年度研究経費を用い, 断熱用高真空排気系用システムの組み上げを行い, 又^3He-^4He希釈冷凍機自作用の循環排気系バルブ類の購入等を終えて現在組み上げの段階に来ている. これらを系統的に連結させ調製するのが次の計画であるが, 目下, 九大工学部本館内の当研究室はその改修工事と重なり, しばらくの間(2〜3ケ月)研究進展が遅れている. しかし5月頃から装置の調製にかかれる予定である. 上述した計画1が実現すると, 次の2.三角格子磁性体物質による基底状態と低温励起に関する実験を開始する予定である. この具体的内容は計画書に記されたとうりであるが, 今回これらとは別に新しい物質, 有機ラジカル低次元磁性体系をも測定の対象にする. これらはS=1/2の量子スピンの反強磁性一重項状態にあり, 電子を非局在化させる手段(例えば, 加圧, 試料中の導電性を上げる再合成等)により, 上述した共鳴原子価結合の可能性を追究する. このことは高温超伝導の機構ともからんで, 重要な課題となってきた.
|