研究概要 |
北海道大学地震観測アレイデータを用いて上部マントル速度連続層の深さと微細構造を調べた. 62年度は主に波形データの編集と予備的解析を行った. 1.遠地P波初動の上下, 東西, 南北3成分の波形データを編集した. 地震総数59個. このデータを用いて, P波初動の走時残差, スローネス, 振幅, 入射方向を測定し, 地震観測点位置による総計的性質を調べた. 走時残差については明瞭な地域性が見られ, 重力のブーゲ異常との間に著しい負の相関のあることがわかった. 走時残差の方向依存性から日高山脈下の最上部マントルに20%に達する負の速度異常のあることがわかった. この走時残差データの3次元インバージョンを行なった北海道下の3次元P波速度構造モデルを作った. 日高地方の観測点で走時異常と振幅異常の間に相関が見られ, これは日高山脈下の低速度異常によって波線の収束が起っていることを示している. 2.上で求めたアレイ内の速度構造異常の補正を行ない, P1P1およびその先駆波のアレイ解析を行った. フィージー諸島の深発地震のデータを解析し, 大西洋中央海嶺下深さ655kmに大きな速度不連続が存在することを示した. これほど明瞭ではないが415kmにも不連続が存在するこがわかった. 振幅比の測定からこの不連続層の厚さが高々2〜3kmであることが明らかになった. 従っていわゆる650km不連続は中央海嶺付近でも地域性が小さいことになる. 3.遠地の深発地震からS-P変成波のデータセットを編集した. この解析は次年度に行なう. 4.P1P1先駆波解析は次年度も行なう. データはこれまで5地震得られ, この数は順次増加するので, この解析によって, 上部マントル不連続層の地域性に関する新しい知見が得られると思われる.
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