1.遠地地震からのP波初動を解析した。走時異常から3次元インバージョンの手法を用いて北海道下の地殻・上部マントルの3次元P波速度構造を決定した。日高山脈下の深さ50-100kmに8%の低速度域が存在することが明らかになった。この低速度域によって日高周辺の観測点で見られる走時異常と振幅異常の相関を定性的に説明できる。第4紀堆積層上にある観測点で振幅の増大が顕著である。各観測点での入射方向の異常も明らかした。 2.P´P´先駆波を観測解析した。2年間で9地震から明瞭なP´P´波が記録されており、P´P´および先駆波をスタッチング・フィルター処理等を用いて解析した。この処理で1.で求めた観測点異常の知識が不可欠であることが明らかになった。フィジー諸島で発生した大深初地震によって非常に良好な記録が得られ詳細に解析され、大西洋中央海嶺の近傍の深さ415kmと655kmに大きな速度不連続が存在することが明らかになった。この地震の追解析がすでにヨーロッパ・アメリカの観測網で行なわれ興味深い成果が出ている。本研究ではディジタルデータを用いているため浅初地震をも用いることができ調査領域を広げることができた。中央海嶺直下を除いてその周辺では650km不連続の深さに有意な(10km以上)変化は出せなかった。 3.千島-アリューシャン列島に沿って震央距離6°-55°で発生した浅初地震のP波初動と後続波の走時から太平洋北西縁の深さ800kmまでのP波速度構造を決定した。試行錯誤法とt-Pデータのインバージョンを採用した。太平洋の中で海洋底年代の古いこの地域下には最上部マントルの低速度層は存在しないことが明らかになった。650km不連続層の深さは700kmと決定された。これはプレート沈み込み地帯でこの不連続層の深さが深くなっている可能性のあることを示しており、プレートの行方を議論するための重要なデータになると思われる。
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