研究概要 |
火山噴火の前に地熱異常が報告される例が多いが, ある火山では熱的前兆がなく, またある火山では噴火後に地熱活動が活発化するなど, 様々な挙動を示している. 本研究者等は, こうした違いを与える要因として地熱活動を維持している熱源の地下構造(例えば地下深部のマグマ溜りと直接結ばれているかなど)が重要であると認識しつつある. 本研究では, 三宅島火山, 伊豆大島火山, 霧島火山を選び, 熱学的調査と電磁気学的調査を同時に行い, 相互に比較した. 結果は以下の通りである. 1)三宅島火山では1983年に熱的前兆を伴わずに噴火, 噴火後に山頂の地熱活動が一時的に活発化した. この変化はi)山頂の地熱活動を保持していた熱水系が地下深部のマグマから隔離されていたため熱的前兆が現れなかった, ii)噴火後は地下から供給されたマグマと地下水との熱交換により水蒸気が大量に作られ地熱活動が一時的に活発化したと説明される. 三宅島火山ではこのような現象が過去にも繰り返し起こっており, 現在は今回の噴火で供給された熱エネルギーを次の噴火まで消費している段階である. 2)伊豆大島火山では1986年7月に火山性微動が発生した後に地熱活動が急激に活発化し11月の噴火に至った. たの変化は山頂の地熱活動を維持していた熱水系が地下深部のマグマとつながっていたためマグマから放出される高温の火山性ガスの量の増大が明瞭に反映したために起こった. 3)霧島火山では噴火に至らないが地熱活動の消長が著しい. これは熱水系が発達しているため, マグマから放出される火山性ガスの量の増減が明瞭に反映されるためと考えられる. 4)これらの結果から本研究者等のモデルが基本的には妥当である事が明らかとなった. 今後は他の火山の実例を検討していく事が必要である.
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