研究概要 |
平面境界の場合の有限振幅熱対流の研究は古くから行われており, その性質も比較的よく知られている. しかし, 地球内部のマントルや核の中で起こっているであろうような, 球界が球面で, しかも重力が半径方向に働いている場合の熱対流は, 理論的な解析が困難なこと, 実験が殆ど不可能なこと等のために, 研究も少なく, 対流の性質も余り良く分かっていない. 最近, 超拘束電子計算機の発達により, この問題をある程度まで数値的に解くことが可能になったが, 数値的な解法はある特定のパラメータの組にたいしては解を与えるものの, 解の大局的, 総合的な性質を与えるものではない. 本研究は古典的な摂動論によって球殻内の有限振幅熱対流の安定性を出来る限り解析的に調べようとするものである. 球座標における非線型問題においては, 球関数の積の積分(ウィグナー積分)が必要となるが, 本研究においてはこれらの積分は代数的に求めることとし, 計算には数式処理システムを用いることとした. この他, 摂動計算にも数式処理システムを用い, 更に必要に応じて処理システムを自作して計算を行った. その結果, 比較的小さい波数ののを含む運動については3次の摂動方程式までを導くことが可能になった. 具体的な対流の安定領域を求めるためには動径方向の固有関数を数値的に求める必要があり, 現在その計算を行っている. また, このような方法の有効性を実証するために, 浮力と表面張力の2つの力によって駆動される対流について計算を行い, 一方の駆動力の○の極限で, これまでに知られていたレィリー・ベナール対流, マランゴーニ対流の安定性の結果と一致することが確かめられた.
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