研究概要 |
地殻ガステレメーター連続観測点の湯谷に近い, 三河大野近辺に北西-南東方向の断層が地震活動から推定されている. この近傍の極微小地震活動の把握のため, 鳳来町門谷, 峰野, 大島の三点に臨時地震観測点を設置した. データの収録は7月末より2点, 8月中旬より1点開始した. レコーダーは本科研費で購入した1台に加え, 既存の同タイプのものを使用した. また同時に, この地域の東北約20kmにあるルーチン地震観測点(新豊根)のデータを連続モニターした. 水素ガス等の地殻ガス組成変動データは湯谷のテレメーターデータを用いた. 地震臨時観測は現時点でも継続中である. 地震データを検測・解析した結果, 推定断層近傍に震源をもつ地震活動が認められたが, そのマグニチュードは大部分が-1から1前後で, 極微小地震の範囲に留まった. 既設ネットによる観測の結果では, この観測期間におけるこの地域の地震活動度は, 従来に比して極めて低かった. 既設ネットのデータで震源決定された地震は1個のみである. 他大学・機関のデータを参照した範囲でもその傾向に変わりはない. 一方, この期間, 水素ガス濃度は検出レベル以下であった. He, N_2, Ar, CH_4については顕著な変動は認められていない. ただし3月中旬以降, 水素ガスが検出されるようになった. 以上の結果, (1)既設地震観測ネットデータの震源決定精度がおさえられるなど, 従来の研究結果のより厳密な評価が可能となった. (2)この期間, 地震活動度は顕著に低下しており, 水素ガス濃度低下との相関が, 消極的な意味ではあるが認められた. また, 推定断層近傍での地震活動が存在していても, 極微小地震程度の活動規模では地殻ガス濃度変動に結びつかないことが確認できた. (3)この期間, この地域の応力場の応力レベルは低下傾向にあったと考えられる. 3月の水素ガス濃度変動は地震データとは未照合であり, 今後継続した観測の必要性が認められる.
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