火山体及び周辺に発生する地震を火山性地震と総称しているが、これらにはマグマの上昇・噴出に伴って発生する地震とこれとは全く無関係の地震とが混在している。火山性地震を噴火の前兆と見なすためには両者の判別を明らかにする必要がある。本研究は、1914年の桜島地震及び1922年の島原地震に焦点を当てて、地震観測記録・関係文献の収集及び現地調査を行ない、火山活動及び火山体の地体構造とどのように関係した地震であったかを明らかにすることを目的とする。 62年度は桜島地震及び島原地震の気象台及び大学に残された地震計記録を収集して解析を実施した。しかし、何れも古い型式の地震計であり近代的な解析に堪え得るデータでなかったため十分な結論に到達できなかった。両地震の特性については、地震発生の時系列・震度分布・被害分布・最近の同一地域で発生する微小地震・重力異常等のデータと比較考察し、両地震共緩慢な断層運動により超低周波地震が起こったものと解釈された。更に両地震の発生機構は火山地帯の地殼応力場に支配されていたことが分かった。 63年度は上記の研究の参考として、近代的な地震計測データの得られている1986年11月22日伊豆大島噴火直後に発生したM6.0の地震について考察した。先ず、4地点(伊豆大島・湯ケ島・犬山・松代)での長周期地震計記録を収集したところ、10〜60秒の長周期震動を記録しており、これは通常の地震には見られない特異な波である。そこで全国的に配置されている気象庁59型(周期5秒)の地震計記録を約80点集め、そのうち良好な記録を用いて前記の長周期震動の特性を調べた。その結果、火山近傍で発生する地震のcorner frequencyが低いことが確かめられ、表面波の方位特性は火山近傍の応力場に支配される実体波と同じメカニズムにより生成されるらしいことが分かった。
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