西部熱帯太平洋の海水温、混合層水温には、けん著な2〜3年周期が見られ、この地域の海水温変動の最も卓越する振動モードとなっていることが、まづ明らかにされた。これは、東部太平洋で数年周期のENSOモードが卓越することと、非常に大きな対照をなしている。このQBO的な海水温変動は、特に北半球冬に振巾が大きいことも示された。さらに、この海水温のQBOは、夏のインドモンスーンの変動と密接にリンクしており、インドモンスーンが強い(弱い)夏の後に、秋から冬にかけて、海水温偏差が正(負)となることが明らかとなった。この時差を持った強い相関は、活発(不活発)なインドモンスーンに引き続いて東南アジアから西太平洋域での対流活動が活発(不活発)となること、これに伴って熱帯東西循環が強(弱)められ、下層では西太平洋〜インド洋では西風、東・中部太平洋では東風が強(弱)められることにより海水温偏差が形成されることを示す。人工衛星からのOLR(赤外放射)資料、NMC風資料による解析は、この物理過程を示持している。 さらに、赤道地域の対流圏・成層圏を通じた東西風成分の解析では、対流圏のQBO的変動が、成層圏QBOと無関係ではなく、密接にリンクして変動をしていることが明らかになった。即ち、圏界面へと下方伝揺する東(西)風成分の位相と、やはり対流圏下層から圏界面へと上方伝揺する東(西)風成分の位相が少くとも1964-1982の19年間においては、ずれることなく、圏界面付近で同期していることが明らかとなった。この現象を説明する物理機構は、今のところわかっていないが、これまでの成層圏QBOの機構に関する理論に、一石を投ずるものとして期待される。
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