太陽系プラズマの様々の局面で、大振幅アルフェン波が重要な役割を果たしている。本研究では次の3つの項目、(1)平行伝搬アルフェン波のイオン・ビーム・サイクロトロン不安定性、(2)斜め〜垂直伝搬する磁気音波とイオンの低調波共鳴現象、および(3)大振幅アルフェン波乱流による非熱的粒子の統計的加速機構、に関わる非線型相互作用の研究を行なった。 (1)イオン・ビーム不安定性により励起されたアルフェン波が発達するに伴い、ビームは波の成長の反作用により減速を受ける。62年度の研究によりこの減速効果は空間的に一様に発達するのではなく、空間的に局在化し、イオン・クランプを作り出すことを見いだした。我々は、このクランプ形成が、地球前面の定在衝撃波上流領域で観測された。空間的に局在化したイオン集団の起源を説明するものであると考えている。 (2)62年度の研究において斜め〜垂直伝搬する磁気音波とイオンの間にはサクロトロン周波数の低調波で起こる共鳴現象が重要であることを示した。63年度の研究により、磁気音波の振幅が平均磁場強度の50%を越えるような場合、波が単色であっても粒子の運動はもはや規則的でなくなることを見いだした(カオスの出現)。磁気音波の場合に粒子の運動がカオス的になることはこの研究で初めて明らかにされたものである。 (3)発達したMHD乱流のもとでは、粒子はピッチ角散乱と同時にエネルギー方向へも拡散される(統計的フェルミ過程)。我々は以前にこの加速過程に対する非線型効果(非共鳴乱流成分による粒子軌道の変形)の重要性を指摘していた。63年度の研究において、統計フェルミ加速が起きていたと考えられる彗星・太陽風相互作用領域の観測結果の検討から、彗星定在衝撃波近傍の被加速イオンのエネルギースペクトルの解釈にこの非線型効果が重要である可能性を見いだした。
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