研究概要 |
本研究の目的は, 電子衝撃法を用いて三重項状態のダイナミックスならびに電子衝突による励起のメカニズムを明らかにすることにある. この目的に沿って以下のような研究を行なった. 現有の電子衝撃発光測定装置を用い, ベンズアルデヒド, 1-インダノン, 2-インダノン, P-ジクロロベンゼン等について電子衝撃発光を測定. 前者二つの化合物についてはすでに電子衝撃によるりん光が観測されている. ベンズアルデヒドについては振動励起状態からのりん光を測定し, 低圧における減衰曲線およびその圧力依存性を測定. ヘキサン等の添加気体を用いた. 残りの二つの化合物については電子衝撃りん光は, まだ確認されていない. 現在も測定およびデーターの解析を引き続き行っている. 現有の装置では, 励起関数を自動的に測定することができず, 電子のエネルギーを変えながら, 一点一点測定していた. 今回は, 自動測定できるように電子回路を製作し, インターフェースの改良を行なった. エネルギーを設定するための電圧出力部分を除き完成している. 電子透過スペクトルと電子衝撃発光が同時に測定できる装置を製作した. 装置は, 電子銃(パルス動作可)およびエネルギーフィルター, 衝突室, ファラデー・カップ, 試料圧調整用チャンバー等から成る. これらの部分は, すべてステンレススチール製(SUS316)であり, 最後の部分を除き一つのチェンバー中にセットされている. 各部分の支持及び電気絶縁のためにルビー球を用いた. 衝突室には発光測定用の石英窓がついている. この窓を利用して光励起, 光吸収の実験も行えるようになっている. 装置の組立, 真空試験等を終え, 測定を開始した段階である.
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