研究概要 |
固体SASSNMR法を用いて尿素包接化合物中におけるn-ヘプタンからn-デカンまでのアルカン分子の各炭素位置におけるCH間双極子相互作用を^<13>C化学シフトで2次元的に分離して測定した. メチレン基における双極子相互作用は鎖端の方からα位, β位, γ位以上の順に大きく, また分子間については分子が長くなるにつれて大きくなった. 特にn-ヘプタンとn-オクタンでの相互作用はn-ノナンやn-デカンよりもずっと小さいことが見出された. このことは以前に行なった. ^<13>C化学シフトがn-ノナンよりも鎖長の短かい分子が他の分子に比べて著しく高磁場シフトを示すことにも関係があると考えた. 従来, 尿素包接化合物中でn-アルカン分子は全アンチ配座をとると考えられてきたが, ゴーシュ結合を含む配座も存在して, その寄与の違いが各相互作用の違いに反映していると考えた. そこでMM2分子力場法を用いてモデル計算を行なった. その結果全アンチ配座はやはり最も寄与の大きい配座であるが, その占拠率はn-デカンですら58%以下であった. 計算に基づくスペクトルは実験スペクトルを良好に再現した. 各結合のゴーシュ含有率はCγ-C8結合では著しく小さいが, Cd-Cβ結合では〜20%と高い. Cβ-Cγ結合ではn-オクタンで15%程度あるがn-ノナンで9%へと大きく低下する. 即ち, この結合のゴーシュ率の変化がCH間双極子相互作用や^<13>C化学シフトにおける急激な変化に対応していることがわかった. この配座の変化は, n-オクタンでは比較的多く存在したagaga配座がn-ノナンではagagaa配座となって不安定になることに起因している.
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