研究概要 |
(5-トリメチルシリル)シクロヘキサー2-エンー1-オン(__〜)に対するグリニャール試薬の1, 4-付加は, 種々の置換基について高立体選択的に進行することは既に見だしており, 光学的に純粋な1__〜を用いてこの反応を行ない非常に高い光学純度を持つ3-置換-5-(トリメチルシリル)シクロヘキサノン(2__〜)を合成した. 更に2__〜のトリメチルシリル基を酸化的条件下β脱離させ対応する5-置換-2シクロヘキセノン(3__〜)の光学活性体の合成を行った. 今までは高い光学純度をもつ3__〜の合成は非常に困難であったが, この方法により種々の3__〜が容易に合成できることとなり, 光学活性天然物合成の重要な中間体となると考えられる. また, 1, 4-付加体2__〜をBaeyer-Villiiger酸化すると, 位置特異的にシリル基のβ位が酸化され7買環クラトンが高収率で得られる. これを開環すると3位に不斉中心を持つ6-ヒドロキシヘキセン酸エステルが得られ, 水酸基を酸化した後, 炭素鎖延長することにより, 高い光学純度をもつα-curcumene, citronell酸の合成に成功した. また, 上記の反応では生成する不斉中心が3級のものであったが, 4級の不斉中心の構築を目的として(1__〜から3通りの方法により1__〜の3位に種々の置換基が導入されたものを合成し, これに対してグリニヤール試薬の1, 4-付加をおこない3位に高い光学純度をもつ4級の不斉中心が構築できることを明らかにした. 実際にこれを利用して, 不斉4級炭素をもつテルペンα-cuparenoneの合成に成功した. また1__〜のアニオンの反応についても検討をおこない, α, β-不飽和化合物とのはっのうでビシクロ〔2.2.2〕オクタン誘導体が得られシリル基の特性を生かした転位反応により光学活性ビシクロ〔3.2.1〕オクテン誘導体が容易に合成できることも明らかとし, 1__〜は非常に有用なビルディングブロックであり将来にわたっても活用が期待される事を示すことができた.
|