研究概要 |
1.αγ-ジケトンのパン酵母による還元:2.4-アルカンジオンの2位のカルボニル基がパン酵母により位置選択的エナンチオ選択的に還元されることは既に報告したが, 今年度は末端がメチル基でなくても還元反応が進行することを見い出した. 3.5-ヘプタンジオンでは一方のカルボニル基のみが還元されるが, 光学収率は高くない. 他の3.5-アルカンジオンではいずれか一方のカルボニル基のみが還元されるが, 厳密な位置選択性は認められなかった. これらは更にジオールへ導びくことにより立体選択性の評価を行う予定である. 2.ニトロオレフィンのパン酵母による還元:α-メチルーβ-ニトロスチレンの不飽和結合がパン酵母によって還元されることは既知である. この反応がα-アルキルーβ-ニトロスチレン, 2-メチルー1-ニトロー1-アルケン等他のニトロオレフィンにも応用可能であることを見い出した. 還元の光学収率は化合物によって異なるが, 低いものでも60%, 高いものでは97%とほぼ定量的であって, 既して良好な結果が得られた. 3.エノールエステルの不斉加水分解:α位に置換基を有するエノールエステルが酵素的に加水分解される際に, 一旦エノールを経るのではなく, 二重結合に対するプロトンの付加とアシル基の脱離が協奏的に進行すればカルボニルの隣接位を不斉炭素とすることができる筈である. 実際に2-メチルシクロヘキサノンをモデル化合物としてメチル基側に二重結合のあるエノールアセタートを合成し, 市販のリパーゼ及び保存菌株のエステラーゼ活性をスクリーニングした. その結果, 酵母に良好な活性を見い出すことができた. 約85%e.e.の(S)-2-メチルシクロヘキサノンが得られた.
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