研究概要 |
化学増幅能を内蔵する新しいタイプの化学センサーとして(1)イオンチャンネルセンサー及び(2)イオンデートセンサーの基礎開発を行った. 前者については, その成果を公表した(Amal, chem.,59, 2842(1987)). (2)についてはセンサーの試作を行い, それを用い化学増幅能をもつことを検証した. 1.イオンチャンネルセンサー:生体膜において一般的に見られるイオンチャンネルの特徴は, 基質の選択的認識とそれに続くチャンネルのスイッチングによって増幅を行うことである. このような特徴をもつイオンチャンネルをモデルとして, その原理を模倣したセンサーを開発した. その原理を図1に示す. 両親媒性の人工脂質の単分子膜をLangmair-Blodgett法により固体下地電極上に累積する. この分子集合体はマーカー(モニター)イオンの膜透過を制御し, 閉じられたチャンネルとして働く. この膜は溶液中のイオン(電気不活種でよい)を選択的に認識し, それによって膜分子の構造変化が起こり, マーカーイオンの透過できるゲートを開く. この方法によりCa(II), Mg(II)Ba(II)及びClO_4^-イオンチャンネルセンサーを製作した. Ca(II)センサーの場合7倍の増幅能をもつことが確認された. 2.イオンゲートセンサー:膜の酸化状態のスイッチングにより, モニターイオンの膜透過を誘起し, 検出するイオンゲートセンサーを試作した. アニオン交換膜にとり込まれたFe(CN)_6^<3->イオンを還元することにより, H+イオンの膜透過が誘起される. 電導度法あるいは電量法によりH+イオンの膜透過をモニターすることで, 膜中のFe(CN)_6^<3->イオン濃度を間接的に定量できる. このセンサーは目的イオン濃度を8倍に増幅して検出することが確認された.
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