研究概要 |
1.希土類元素の新しい抽出系として, トリクロロ酢酸と中性多座配位子を用いて研究した. La, Ce, Sm, Tb, Luなどのランタノイド(Ln(III))がトリクロロ酢酸(Htca)とヘテロサイクリック二座アミンの2,2´-ビピリジンによってpH5以上で1,2-ジクロロエタンやニトロエタンに容易に抽出されることを見い出した. Ln(III)の分配比とそれぞれの抽出剤濃度の両対数プロットから, 抽出種がLn(bpy)_2(tca)_3であることを明らかにした. また, 比較のため酸性キレート試薬であるテノイルトリフルオロアセトンと塩基性の高い耐熱性単座配位子トリフェニルアルシンオキシドを用いて抽出平衡を調べた. 両方の系において, Ln(III)の抽出性は原子番号とともに高くなり, また, Ln(III)の分離係数も同程度であった. 2.トリクロロ酢酸とマクロサイクリックポリエーテルの18-クラウンー6(18C6)を用いた新しい抽出系を研究した. 1,2-ジクロロエタンへのLn(III)の分配比はpH3-4.5で一定であった. 抽出平衡の解析から, La, Ce, Pr, Nd, Sm, EuはLn(18C6)(tca)_3として, またTb, Tm, LuはLn(18C6)(tca)_3及びLn(18C6)_2(tca)_3として抽出されることを明らかにした. Ln(III)の抽出性は原子番号の小さい方が高く, これまで知られているものと全く逆の傾向を示した. しかも, LaからTbまで極めて高い分離係数を達成することができた. 3.多段液-液抽出系として抽出クロマトグラフィーの適用を検討した. アルキル化学結合固定相-極性移動相系において, 移動相にドデカンを飽和溶解させることによって多段液-液系が構成できることをβ-ジケトン錯体のクロマト挙動から確認した. 今後の計画として, アルキル化学結合固定相あるいはポリスチレン樹脂固定相と, 中性多座配位子を含むベンゼンや1,2-ジクロロエタンで飽和にした移動相(水相)を用いて, Ln(III)の高性能抽出クロマトグラフィー系を確立する.
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