研究概要 |
1.鉱床鉛同位体比の検討:コリア半島の硫化物鉱床は中生代花崗岩類の活動に関係して生成したと考えられ, 半島各地に広く分布し, 基盤の多くは先カンブリア時代の変成岩である. 鉱床鉛の同位体比を新しく得られた値も含めて解析した結果, 半島東南部の慶尚盆地の鉱床群を別にすると, 約2・10^9年と約2.5・10^9年の二つのアイソクロンが識別されることがわかった. 前者はコリア半島基盤岩に与えられている年代にほぼ一致しており, 鉱床鉛が基盤のU-Th-Pb系の鉛同位体進化を反映しているというこれ迄の結論が再確認された. 後者の年代は, このアイソクロンを与える鉱床が半島西岸寄りに集中することから見て, 中国本土から続くさらに古い安定大陸地殻のものである可能性がある. 一方, 慶尚盆地の鉱床鉛は, 日本の先中新世の鉱床鉛と同位体的に一つのグループをつくるように見え, これらが同一のテクトニクス的背景をもつことを示唆している. 2.コリア半島の花崗岩, 変成岩(基盤岩)のU,Th,K:現在までに得られた予察的な分析結果によれば, 花崗岩のこれらの元素の濃度は, Seoul付近の半島内奥部で高く, これより外側のOgcheon帯以南では概して低い. この傾向は変成岩ではそれほど明瞭ではないが, U,Thが特に高濃度のものはやはりOgcheon帯およびそれより内奥部に見られる. 花崗岩, 変成岩を通じて見られる特徴はTh/U比がほぼOgcheon帯を境にして内奥部で高く外縁部低いことである. これは鉱床鉛の同位体比に閉鎖系モデルを適用して計算で求めたU/Th比が示す傾向と一致するものであり, 鉱床, 花崗岩および変成岩が大局的には一つの構造単位に属することを示している. Th/U比が示すコリア半島の地域区分と鉱床鉛のアイソクロンの地域区分が必ずしも同じではないことは今後の課題である.
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