研究概要 |
マウス色素細胞分化の最終段階において合成されるメラニンの型は, 細胞膜上MSHホルモン受容体におけるMSHと毛包細胞から伝達されるa遺伝子座の産物との競合的相互作用によって調節されると考えられる. 本研究の目的の一つはa遺伝子座の構造解析であり, 本年度においては, 1.a遺伝子座の優性対立遺伝子A^yをもつ致死黄色マウス(A^y/a)の皮膚を劣性ホモ(a/a)のマウスに注射して免疫し, ハイブロドーマを作成して抗A^y産物モノクロナール抗体を調整した. 2.致死黄色マウス(A^y/a)の皮膚からmRNAを分離して, cDNAライブラリーを作成し, 現在上記モノクロナール抗体を用いてスクリーニングを行なっている. 一方, 器官培養および細胞培養の実験から, 致死黄色マウス(A^y/a)の色素細胞はMSH, コレラトキシン, フオルスコリン, cAMPのいづれにも反応して合成するメラニンの型を黄色から黒色に変換するが, e遺伝子座の突然変異によって黄色メラニンを合成しているマウス(劣性黄色, e/e)の色素細胞はMSH, コレラトキシン, フオルスコリンに反応せず, cAMPにのみ反応することが明らかとなった. この結果からe遺伝子はマウス色素細胞において, アデニレートシクラーゼの機能を支配していると考えられるので, e遺伝子の構造をも解析する目的で, 3.前に分離した野性型マウス(E/E)の培養色素細胞からクローニングによってMSHによく反応してcAMPレベルを上昇させる細胞株を樹立し, この細胞を劣性黄色マウス(e/e)に注射して免疫し, ハイブリドーマを調整して抗Eモノクロナール抗体を作製した. 現在この抗体を用いて色素細胞のcDNAライブラリーから, E遺伝子のcDNAをクローニングしている.
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