研究概要 |
昨年度の研究によって、本研究に用いる3種の寄生蜂、Anisopteromalus calandrae,Dinarmus basalis,Heterospilus prosopidis,では、同一寄主上に2個以上の同種の卵が存在したときには、必ず1匹の寄生蜂が羽化する、いわゆるコンテスト型の種内競争が起こることが明らかになった。又、これらの寄生蜂幼虫間の種内競争を直接観察する方法も確立した。 これらの結果に基づき、本年度はこれら3種の寄生蜂の幼虫間に見られる種間競争の機構の解明に研究の主力を注いだ。これらの3種の寄生蜂はその卵期間が異なっているので、幼虫期の種間競争を調べる実験ではすべての種の孵化時期を競争の出発時になるよう操作した。 まず3種を、2種ずつの3つの組み合わせに分け、それぞれの組み合わせにおいて、2種の寄生蜂の卵1個ずつを1匹の寄主上に移植し、どちらの種が羽化するかを見た。その結果、これらの3種の寄生蜂では、先の種内競争の場合と同じくコンテスト型の種間競争が見られ、1匹の寄主からは必ず1匹の寄生蜂が羽化した。2種が同時に孵化するように用意した実験では、どの組み合わせにおいても、ある特定の種が優位に立つことはなく、それぞれの種がほぼ50%の確立で羽化した。 次にそれぞれの組み合わせにおいて、一方の種の卵(先着種)がもう一方の種の卵(後着種)より一定時間早く孵化するように、2種の卵の孵化時期に差をつけて寄主上に寄生蜂卵を移植する実験を行なった。その結果、いづれの組み合わせにおいても先着種が後着種を圧倒し、その度合いは孵化の時間間隔が長い程顕著であった。種内競争においては、48時間のいずれでは後着種が優位に立ったが、この種内競争の機構は種間競争においては、どの種も他種に対して発揮できなかった。
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