亜熱帯気候下にある沖繩県西表島のマングローブ林に調査方形区を設けて樹木の更新とそれに及ぼすシロアリの役割についての調査を継続すると共に、樹木の枝に営巣し、樹木の更新に大きな影響を及ぼす可能性の高いコウシュンシロアリの摂食・繁殖についての観察を行なった。また西表島に分布するシロアリの現存量や密度についての資料収集と調査を行った。 (1)コウシュンシロアリのカスト分化 飼育実験によりコウシュンシロアリの階級分化の概要は明らかになり、Kalotermes flavicollisとほぼ同じであることが分った。兵蟻のは雌も雄も含まれていた。補充生殖虫については奇妙なことが明らかになった。実験コロニーで得られた補充生殖虫150個体はすべて雄であった。また補充生殖虫の出現は、女王と王のいずれによっても完全に抑制されたが巣内の有翅虫によっては抑制されなかった。また野外で得られた85コロニーの内訳を見ると王と女王=74、王のみ=1、女王のみ=2、女王と補充生殖虫の雄=7、補充生殖虫の雄2個体=1であった。従ってコウシュンシロアリでは補充生殖虫は雄のみが作られている可能性が高い。同属の他種では雄・雌の両方の補充生殖虫が出現する。 (2)亜熱帯森林のシロアリの分布と密度 西表島には9種のシロアリ(レイビシロアリ科3種、ミゾガシラシロアリ科2種、シロアリ科4種)を確認した。このうち生木に営巣し、多少とも生木を直接攻撃するのはコウシュンシロアリとカタンシロアリである。タイワンシロアリとイエシロアリはイタジイの幹の枯死した心材を食べている例がまれではあるが見られた。地中性のシロアリの密度と現在量は80/m^2、152mg湿重/m^2であった。
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