研究概要 |
微細藻類間のアレロパシー現象を動力学的に解析するためには、単独培養における藻類の増殖全域を表示することが可能な増殖曲線式が必要である。しかし、急激な死滅期を持つ藻類の増殖は、既存の増殖曲線式(ロジスチック式やコンペルツ式)では追跡が不可能である。そのため、昨年度はそれらの藻類の増殖もまた表示することが可能な増殖曲線式を導き、それを基礎として2種藻類間相互作用モデル式を作成した。本年度はこれを多種藻類間まで拡張することによって、一般式としての微細藻類間アレロパシー現象解析式を作成した。そして、2種藻類の混合培養実験から得られた相互作用パラメーターを用いて、珪藻を中心とする5種藻類(Cymoella,Planktonema,Navicula,CyclotellaおよびSkeletonema)の混合培養実験における各藻類の動態予測に適用した本式によって予測された各藻類の動態は、実測値と概ね一致した。すなわち、Skeletonemaが消失することを的確に予測しているだけでなく、約2週間後の藻類濃度がNavicula,Planktonema,Cymoellaの順に高いことも予測できた。 藻類間相互作用物質については、Cymbellasp.の産生する異種藻類増殖抑制物質の特性および分離法を検討した。その活性は、検討の結果Cyclotella hahaを指標藻類として測定することとした。培養上澄液を用いた本物質の熱安定性は、1時間の熱処理では85℃以下であった。pHに対しては、中性条件に比べ酸性または塩基性条件下では若干低下する傾向があるが、安定であった。一方、本物質の分離法については、培養上澄液、藻体内、および藻体表層からの分離を試みた結果、最も簡便な抽出法として藻体の10%アセトン洗浄法を採用した。この洗浄液中の異種藻類増殖抑制物質の分子量は、Bio Gel P-2によるゲル濾過法により約200と推定された。
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