研究概要 |
本研究は次の3つの内容にまとめられる. 1.マングローブ林内のコケ植物の繁殖特性 数年前より実施してきたマングローブ林内のコケフロラに加えて, 本研究に関連して, 現地(沖縄本当大浦)でコケ植物の繁殖様式を再確認した(1987年4月). 実験質においては, コケ植物の繁殖特性を具体的に検討した. すなわち, マングローブ樹種への着生種は, 植物体が小形で樹皮に圧着する成育型を示すが, それらは胞子体や無性芽を付け易い性質を有している(とくにクサリコケ科). また, それらは耐乾性, 耐塩性の種が多く, 雌雄同株であることも繁殖に有利な条件といえる. (日本植物学会で発表, 1987年10月, 筑波大学). 2.ブナ林内での繁殖実験 遷移段階の異なるブナ林(広島県比婆山)の8ケ所(うち1つはヒノキ植林)にすでに設置したプロット(石片および樹幹片-ブナ, クリ, ミズナラ, クマシデ, ヤマモミジ, コナラ, ウリハダカエデ, ヒノキ)で, 本年度(1987年10月)の観察実験をおこなった. その結果, 石片とクリ, ヒノキの樹幹片で, わずかながら蘇類1種の小群落を認めた(種は未同定). この蘇類の出現は, 遷移の初期段階ではみられず, いずれも遷移後期のスタンドのものであった. 今後は, 3ケ月間隔で調査がおこなわれる予定. 3.都市型コケ植物の繁殖と群落形成 大学構内でおこなってきた(1982年以降)コケ群落の形成と繁殖実験について広い視野にたって総括的にまとめた. その結果, 都市型コケ植物の特徴として, 胞子体形成が容易である一方で, 無性芽形成が著しいコケ植物が多いことを認めた. 本研究補助金で購入した人工気象器による土壌培養実験は予備実験の段階にとどまった.
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