本研究は次の3つの内容を含んでいる。 1.都市型コケ植物の繁殖と群落形成 2.マングローブ林内のコケ植物の繁殖特性 3.ブナ林内での繁殖実験 1および2については、資料収集はすでに完了し、研究成果を学術雑誌に投稿すべく目下準備中であるが、その一部は口頭発表した(日本生態学会、中国四国支部大会、1988年5月、愛媛大学)。 3については現在、実験観察が継続中である。その研究成果の一部は以下のとおりである。 遷移段階の異なるブナ林(広島県比婆山)の8ケ所(うち1つはヒノキ植林)にすでに設置したプロット(石片および樹幹片-ブナ、クリ、ミズナラ、クマシデ、ヤマモミジ、コナラ、ウリハダカエデ、ヒノキ)で本年度の観察実験をおこなった(1988年4月、7月および10月)。すでに前年度(1987年)に石片とクリ、ヒノキの樹幹片でわずか1種の蘚類の小群落を認めていたが、本年度はそれに加えて蘚類2種、苔類1種を確認した(種は未同定)。樹幹片についてはコケ植物が一応に着生していたが、その中でもとくにヒノキには着き易く、ヤマモミジには着き難い傾向があった。遷移段階の初期の伐採地ではコケ植物の着生は全くみられず、ブナ林形成の後期における林床で、着生が多くみられた。また、石片、樹幹片両方の基物において、コケ植物がはい上る状態で着生する傾向が多く観察された。一般にコケ植物が着生して後の群落形成は遅い。これに対して、遷移の進んでいるブナ林における朽木上のコケ群落の発達は比較的速かった。なお、一部のブナ林では樹木の幹に方形枠を設置したが、この方は発達がほとんどなかった。 今後は、1、2、3、を総括し、コケ植物の繁殖特性についてまとめる。
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