研究概要 |
今年度は以下の4つの問題について研究を進めた. 1.は, すでに動物行動学会で発表し, 論文を完成させ, Theoretical Population Biologyに投稿中である. 2.3.4.もほぼ論文の原稿を完成させつつある. 3.は63年2月に公開講演会で発表した. 1.有限期間における交尾後ガード戦略(共同研究者:辻宣行) 一定数のオスとメスが最初に与えられたとき, 有限期間の非定常状態で, オスが自分の子の数を最大にするために, 交尾後ガードをすべきかどうかが解かれた. 連続産卵, 一括産卵のいづれの場合も, 先に解かれた定常モデルと同じく, おおむね, 性比と精子置換率が1より大きいことがその条件である. 2.寄主摂食をともなう寄主寄生者相互作用のモデル(共同研究者:矢野栄二) かなり多くの寄生蜂は, その寄主を産卵と摂食の両方に使う. その摂食の割合が中程度のとき, もっとも寄主の平衡密度が下り, システムが安定化されることが分った. 害虫防除のための天敵導入計画に対する, いくつかの有益な示唆も得られた. 3.オスの子殺しに母親はなぜ抵抗しないか?(共同研究者:長谷川寿一) 近年, ハーレム型の社会構造を持つ多くの霊長類において, 繁殖オスの交代が起きた直後に, 子殺しが行なわれることが知られるようになった. 子殺しとそれに抵抗する母親の形質が, どんな条件のもとで進化するのかを集団遺伝学のモデルを使って調べた. 4.無吸血蚊の進化(共同研究者:岡澤孝雄,辻宣行) 無吸血蚊の進化条件を, 吸血と無吸血の場合の内的自然増加率を比較することによって調べた. 吸血源の豊富さ, 幼虫期のエサ条件と死亡率が重要であることが分った.
|