研究概要 |
今年度は、昨年度からの研究テーマをまとめるとともに(1,2)、新らしく生活史戦略の研究は始めた(3,4)。 1.オスの子殺しに母親はなぜ抵抗しないか?(共同研究者:長谷川寿一) 近年、ハーレム型の社会構造を持つ多くの霊長類において、繁殖オスの交代が起きた直後に、子殺しが行なわれることが知られるようになった。子殺しとそれに抵抗する母親の形質が、どのような条件の下で進化するのかを、集団遺伝学のモデルを使って調べた。 2.無吸血蚊の進化(共同研究者:岡澤考雄;辻宣行) 無吸血蚊の進化条件を、吸血と無吸血の場合の内的自然増加率を比較することによって調べた。吸血源の豊富さ、幼虫期のエサ条件と死亡率が重要であることが分かった。 3.昆虫における資源消費と1化及び2化の生活史濁汰(共同研究者:曽田貞滋) 寄主・寄生者の関係は、固体群動態の中で最も重要なものの一つであるが、寄主が年一世代で、寄生者が年一世代のものと年二世代のものが共存する場合がある。なぜこのような奇妙な生活史が進化したのかを、資源消費の観点から調べた。 4.昆虫の密度依存的分散と卵吸収休眠のESS(共同研究者:辻宣行) 環境の時間空間的変動に対応するため、あるいは、親子兄弟間の競争を緩和するために、分散と休眠は生物の重要な生活史戦略となっている。植物を想定して作られた最近の数理モデル(例えば、Ellener,1987 Am.Nat)の問題点を指摘し、特に昆虫で重要と思われる密度依存的戦略の効果を解析した。分散と休眠とトレードオフの関係になること、密度依存的戦略は環境変動に非常に強いことなどが示された。
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