今年度は、本補助金の最後の年に当たり、昨年度までの研究テ-マをまとめた(1、2)。更に、昨年度から始めた3はほぼ論文の原稿が完成しつつある。 1.オスの子殺しに母親はなぜ抵抗しないか?(共同研究者:長谷川寿一、伊藤嘉昭) 近年、ハ-レム型の社会構造を持つ多くの霊鳥類において、繁殖オスの交替が起きた直後に、子殺しが行われていることが知られるようになった。子殺しとそれに抵抗する母親の形質が、どのような条件の下で進化するのかを、集団遺伝学のモデルを使って調べた(Evolutionに印刷中)。 2.無吸血蚊の進化(共同研究者:辻宣行、岡沢孝雄) 無吸血の進化条件を、吸血と無吸血の蚊の内的自然増加率を比較することによって調べた。吸血源の探索時間、幼虫期の餌条件と吸血行動に起因する死亡率が最重要であることが分った(Journal of Medical Entomologyに印刷中、佐賀医科大学紀要に発表)。 3.昆虫の分散と休眠(共同研究者:辻宣行) 環境の時間的、空間的変動に対応するために、分散と休眼は昆虫にとって重要な繁殖戦略である。空間的に不均一なパッチを想定し、これまでの単なる定数の分散率や休眠率と密度依存的戦略やパッチの質に依存する戦略を比較して、どのような環境変動にどの戦略が強いかを考察した(第5回国際生態学会で発表予定)。
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