1.ヨウ素ラベルによる高電位電子供与体Dの結合サブユニットの同定 Dの酸化型は暗所で安定でゆっくりとヨウ素イオンを酸化し、その結果光化学系II反応中心サブユニットの1つD2を特異的にヨウ素化することを、酸化型DのEPRシグナル強度とD2のヨウ素化量との関係から確かめた。その結果、DはD2に存在することを示した。 2.Zとして機能するD1上のチロシン残基の同定 明条件下ではZはヨウ素イオンを酸化しもう1つの反応中心サブユニットD1をヨウ素化する。ヨウ素化はチロシン残基に特異的に起こるためZそのものがヨウ素化されたはずで、これを同定することによりZとして働くチロシン残基を同定することを試みた。D1のメチオニンのC末を切断して得られた断片のうち約3kDaのものが特異的にラベルされ、そのN末の配列を調べた結果、グリシンー128からメチオニンー172であることが分った。この領域には2つのチロシン残基が存在するが、チラコイド膜の内腔側にあるチロシンー161がヨウ素化され、Zとして機能していると考えられる。今後ラジオシークエンスによりヨウ素化されたチロシンを確定して行きたい。 3.ZおよびD結合蛋白(反応中心蛋白)D1・D2の精製 D1とD2は疎水性の高い蛋白で存在量も少なく更に相同性が高いことからその精製は難しいとされてきた。そこでホウレンソウから得たD1とD2に富む反応中心標品をSDSで解体した後、2段階のゲル濾過を用いたHPLCによりこの蛋白を大量に精製することができた。更に純化したD1とD2のC末を調べ、それぞれアラニンー344とロイシンー353であることが分った。DNAの塩基配列から推定された一次構造との比較からD1はC末の9残基がプロセスされ失われているが、D2はプロセスされていないことを示した。
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