研究概要 |
(1)蘇類のフナガタミズゴケのカルス細胞は, 明所・有機栄養条件下で継代維持している. この細胞は窒素源としてアンモニウム塩は利用できるが硝酸塩は利用できなかった. この細胞を光独立栄養条件に移したところ窒素源がアンモニアの場合は, カルス状態でよく生長した. この条件下で, 継代維持している細胞を窒素源を硝酸塩のみ含む培地に移すと, 細胞の生長は一時停止し, やがて高頻度で幼植物体が形成された. これにより, 液体培養下で, 窒素源を切り換えるだけでカルス→原系体→配偶体という再分化過程を追跡できる系が得られた. (2)無機窒素同化系諸酵素のin vitroの検出方法について検討した. 硝酸還元酵素・亜硝酸還元酵素については, 既に, 有機栄養条件下で成育したカルス細胞を用いてin vitro活性の検出方法を検討してある. そこで, アンモニア同化系諸酵素〔グルタミン酸脱水酵素(GDH), グルタミン合成酵素(GS), グルタミン酸合成酵素(GOGAT)〕のin vitro活性測定の至適条件をまず有機栄養条件下で成育したカルス細胞の粗酵素抽出液を用いて検討した. GDHでは, NADH及びNADPH依存の活性, GSはシンセターゼ及びトランスフェラーゼ活性, GOGATはフェレドキシン依存の活性におけるpH, 基質濃度, cofactorの種類及び濃度等の至適条件を調べた. GSのシンセターゼの至適pH以外は, すべての条件が, 既に検討されているウキクサの条件に類似していた. また, どの酵素活性も, ウキクサの場合と同様に高い値を示した. 苔3種, 蘇2種, ツノゴケ類1種で, 各酵素活性を比較すると, どの酵素についても種間の差はあまりなくウキクサと同様に高い値を示したが, ミズゴケのGDH活性だけは, 他と比べ著しく低い値であった. 本年度の研究により, 無機窒素同化系酵素のin vitro活性の検出法が検討できた.
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