研究概要 |
光合成細菌Rhodospir llum ruhrumは, 嫌気的明所で光合成により, 好気的条件下で従属的な呼吸代謝により, また嫌気的暗所では醗酵により生活エネルギーを生産するという非常に興味のある細菌である. 報告者らはこの菌を用いて代謝進化を知るべく研究していたところ, 塩基性色素のアクリフラビンによって, 光合成色素形成能を喪失した変異菌がえられることを発見した. これは, おそらくプラスミドの消失に由るとの仮説を立てて, その再現性と真実性を確めるべく数多くの実験を重ねていたところ, アメリカのKuhnらがR.rubrum細胞にプラスミドの存在を示す論文を発表した(1983). しかし彼らは, アクリフラビンによるのではなくDNA分離中に, サティライトDNAの存在することを発見したことによる. われわれがえた50kbpプラスミドは, アクリフラビンにより光合成能を失った, いわゆる白色変異株(野生株は朱色)に形質転換したところ, 転換体は光合成能を取り戻したこと, また光合成色素吸収を再生すること, など発見した. その他, バクテリオクロロフィル合成能をもたないが, カロチノイド合成能をもつ, いわゆる黄色変異株の出現することを発見した. 分離した50kbpの物理的染色体地図を数種の制限酵素について決定した. アクリフラビン処理によってえられた白色変異株の細胞には, バクテリオクロロフィル吸収やカロチノイド吸収がみられない. また野生株から分離されるプラスミドは, この白色変異株からは分離されないこと, また野生株プラスミドを32Pでラベルし, 分離した後, これをプローブとして白色変異株についてハイブリダイズしたが, まったく雑種シグナルが得られないが, 野生株細胞では十分な雑種形成がみられることなどから, 白色変異株に50kbpプラスミドは含まれていないことは明らかであるといえる. 現在この問題をさらに深く追求中である.
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