光合成細菌の紅色無硫黄細菌の1種であるR.rubrumを用いて、下記の研究を行った。当菌は、嫌気的明所で光合成を行い、好気的条件下では酸素呼吸により従属栄養的に生長する。また、嫌気的暗所では発酵により従属栄養的に生長する。すなわち当菌は、環境条件に応じて代謝をよく使いわけ、生長、生存することができるので、代謝進化の研究にはきわめて適した生物であるといえる。 R.rubrumの野生型株をアクラフラビンで処理すると、非紅色の各種の変異体がえられることを発見した。そこで本研究では、野生株と白色変異株を用いて次のような研究を行った。 1.白色変異株はバクテリオクロロフィル合成能とクロアトホア形成能を欠くことを発見した。 2.野生株に大型のプラスミドが含まれることをKuhlらの研究とは独立に発見したが、白色変異株はこのプラスミドを欠いている。 3.このプラスミドを野生株から分離、調整し、白色変異株に形質転換すると、紅色に変わり、バクテリオクロロフィル合成能とクロマトホア形成能とを回復する。 4.このことから、プラスミド上に、両機能を発現する遺伝子が含まれることは明らかである。 5.プラスミドを取り出し、各種の制限酵素を用いて物理的染色体地図を作成した。全長は50キロベースと、プラスミドとしてはかなり大きいものであることが、わかった。 6.大腸菌の基本的ベクターであるPBR322を用いて当光合成細菌に形質転換を試みた。このベクター自身は転換能をもつが、これにプラスミドの一部を組み入れた雑種プラスミドを用いて同様なテストを繰返しているが、現在のところ成功していない。現在は、この雑種プラスミドに対する光合成細菌特異な制限酵素によって、細胞内で制限分離を受けている可能性もあり検討中である。DNA量、カルシウム濃度、時間等をパラメーターとする実験はすでに終わっている。
|