申請時に予定していた研究計画は以下の様なものであった。ー1)スフェロプラスト法により得た各種形質転換株の解析、2)co-culture法によ得た各種形質転換株の解析、3)植物腫瘍クラウンゴール形成の感染初期過程におけるアグロバクテリウムと植物細胞の相互作用の解析。これらの実験計画については、2年の研究期間中に、概ね順調に進展し以下の様な成果が得られた。 1)及び2)については、異なる2つの手法で得られ形質転換株については、形態的に異なる幾つかの細胞株のグループが見い出された。これらの細胞株について、生長速度・硬さ・オパイン合成酵素活性・植物ホルモンなどについて生理的解析を行ったところ、同一の形態分類群に属する細胞株は類似した性質を示すことが判明した。また、これらの細胞株の代表的なものについて、T-DNAのインサーションの状態についても解析を行い、各形質転換株の間の差異が何に起因するのかということについて、挿入されたT-DNAの構造に関しい検討した(T.Hoshino、S.Hasezawa、K.Syono)。 3)については、アグロバクテリウムの初期感染過程について走査電子微鏡観察などにより、その感染時の挙動を追跡した。具体的には、CO-cultureの開始時より経時的観察を行い、各時間帯に於ける植物細胞表面へのアグロバクテリウムの付着の頻度・細菌の感染時に特有な挙動(植物細胞表面での細胞の直立など)・細鑑のタイプと付着頻度・様式の関連などについて詳細な検討を加えた(N.Terauchi、S.Hasezawa、……K.Syono)。 これらは、タバコの形質転換株における解析であるが、従来より、平行して行っていたイネの形質転換によっても多数の形質転換株が得られており、それらについても解析を試みた。 以上の様に概ね当初の計画に添って研究を纒めることができた。2、3の事項については現在も検討を続けている。
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